
『マーケティングは「嘘」を語れ!—顧客の心をつかむストーリーテリングの極意』を読みました。企業はお客さまに対して信じられるストーリーを語るべし、とつかみましたが斜め読みすると痛い目にあいそうなので、もう2、3回読み返しつつ、挑戦してみたいと思います。
この本はマーケティングを行なう人(マーケッター)だけでなく、ネットショップの店長さんにもぜひ読んでいただきたい本です。これからのネットショップのあり方、中小規模の店舗が生き残っていくための方向性を示していると思います。
アメリカの心理学者 アブラハム・マズローは、人間の欲求に関して「欲求段階説」を唱えました。人間の欲求は「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「自我の欲求」「自己実現の欲求」の5段階のピラミッドのようになっており、「生理的欲求」から始まってその段階の欲求が満たされると、1段階上の欲求を志すという説です。
「生理的欲求」とは生きていくために必要な食欲、睡眠欲などです。私たちが生活している社会において、この「生理的欲求」が欠乏することはほとんどないといえます。その次の段階の「安全の欲求」は自分の生命を守るための住居や服装、居住環境に対する欲求です。この要素もほとんどの人がそれぞれの家に住み、暮らしています。
私たちが毎日を生き、社会的生活を営むために必要な最低限のニーズは充分に満たされています。また、それ以上に快適な生活をおくるための製品やサービスが必要以上に溢れています。
人々の「ニーズ」が満たされている現代では、人々のより高い段階にある欲求「ウォンツ」を掘り起こし、そこに訴えかけて製品やサービスを提案しなければならない、ということが認知されています。
高い段階にある欲求、つまり「安全の欲求」以上の「社会的欲求」、「自我の欲求」、「自己実現の欲求」に訴えかけていくことです。
「安全の欲求」は安心して生活するための環境整備や不安の解消だけでなく、将来に対する不安の解消も含まれます。「凶悪犯罪が起きている」と示して防犯グッズを提供する、「将来の日本は大丈夫か?」と煽って保険を勧める、「このままでは命が危ない!」と言って健康関連商品を売る、などはわかりやすい例です。
その一段階上にあたる「社会的欲求」は「親和の欲求」や「愛情の欲求」とも言われます。生きていくために必要な欲求が満たされ、自分自身の安全が確保されると、他社とのかかわりあいを求め、良い関係を構築することを求めるようになります。家族などから愛されたいと思うようになるのです。
この段階の欲求になると欲求が満たされる度合いに個人個人での差がはっきりしてきます。その人の生活環境や社会的地位、その人の求める人間関係は幅広く、画一的に良いモデルというのが示しづらくなります。その分、その人に合った細かいモデルの提案、幅広いマーケットが生み出されることになります。
服装一つとってもカワイイ格好、カッコいい服装、大人っぽい格好、親しみやすい格好、いろんなパターンが提案できます。また、異性と親しくなるためのシチュエーション作りのサポートをする遊園地や映画館等の娯楽施設、良い雰囲気を演出するレストラン、記念日をお祝いするためのプレゼント等、多種多様の製品やサービスが提供されます。
人々が遊園地で遊んだり、映画を観に行ったり、レストランで食事をしたり、プレゼントを贈ったりするのは、それらの製品やサービスを利用することだけでなく、「社会的欲求」を満たすために利用しているのだと思います。
社会的欲求よりさらに高い段階にある「自我・自尊の欲求」(尊敬されたい、認められたいといった欲求)、「自己実現の欲求」(自分の能力や可能性を発揮し、自分を向上させたい、充実した人生を送りたいといった欲求)においても同様です。
人々はそれらの製品やサービスが欲しいのではありません。その製品やサービスを通じてより良い人間関係を構築することや他者から尊敬されること、自分自身を向上させ自己実現を果たすことを求めているのです。
また、人々は自分の財産を奪うセールスを嫌います。財産を守ることは「安全の欲求」の一つであり、財産だけを奪っていく自分に不必要な製品やサービスを勧める相手を敵として認識し、排除しようとします。
だからこそネットショップの店長は、お客さまにストーリーを語り、提供する製品やサービスを利用することでお客さまが求めている欲求を満たすことができる、ということを伝える必要があります。
人々は自分の欲求を満たすために必要な投資ならば惜しみなく行なうでしょう。ネットショップの店長はお客さまに対して製品やサービスを通じて欲求が満たされている姿をイメージさせ、信じてもらうための演出を行なう必要があります。
「あなたの販売する商品を通じて、お客さまの家庭はどのように改善されますか?」
「あなたのサービスを利用することで、どのような人間関係が構築されますか?」
ネットショップの店長さんには、お客さまが主役として最高のハッピーエンドを演じていただくための脚本を書いて欲しいと思います。